ポラリファイお役立ちコラム

eKYCを導入したほうがいい理由

  • eKYC

公開日 2024.4.5

更新日 2024.4.5

2020年4月に犯収法(犯罪収益移転防止法施行規則)が改正され、銀行や証券会社、カード会社だけではなく、宅建業、貴金属取扱業などの業態においても本人確認方法が変更されます。変更点のひとつとして注目したいのは、eKYCを利用しなかった場合の本人確認の厳格化。そもそも犯収法とは?eKYC導入すると、どんなメリットがあるのかを解説します。

犯収法改正による本人確認方法の変化

日常生活において、たとえば銀行口座を開く場合や、クレジットカードを作る時など、申し込み者が本人であることを確認される場面があります。こういった本人確認のことを一般的に「KYC(Know Your Customer)」といいます。

なかでも、オンライン上で本人確認が完結することを「eKYC(electronic Know Your Customer)」と呼び、事業者・利用者の両方にメリットのある新しい本人確認の方法として注目されています。

ひと昔前は、クレジットカードなどの申し込みから発行まで、1週間程度の期間がかかっていたかと思いますが、最近、申し込みから時間をかけずに利用できる事例が増えています。これは、2018年の犯収法の改正によって、eKYCが認められるようになったからなのです。

2018年11月の改正により、特定事業者の提供するソフトウェアを用いた本人確認方法(eKYC)では転送不要郵便の発送が不要となった一方で、2020年4月からはそれ以外の確認方法が厳格化されます。

たとえば、これまで主流であった郵送を用いた本人確認において、本人確認書類を原本ではなくコピーで提出する際には1種類の書類を用意すればよかったものが、2020年4月からは2種類の書類を用意することが求められるようになります(住民票などの原本書類の提出の場合の条件は変わりませんが、住民票などを市役所に取りに行くなど利用者に相応の手間がかかります)。

これまでは免許証のコピーだけで対応できていたものが、パスポートや在留カード、マイナンバーカードといった書類の準備が必要となり、利用者にとって負担が大きくなることが予想されます。

犯収法改正による本人確認方法の変化

犯収法改正による本人確認方法の変化

そもそも犯収法とは?

犯収法とは、「犯罪収益移転防止法」の略称で、犯罪による収益が移転して、さらなる組織的な犯罪を助長するのを防ぎ、国民の安全な生活と経済の健全な発展のために制定されたものです。

組織的な犯罪行為として代表的なものとしては、マネー・ローンダリング※1や、テロ資金供与※2が挙げられますが、それらの犯罪行為を資金面から撲滅することを目指しています。こういった犯罪行為への対策は、国際的な協調が不可欠なことから、日本においてもFATF※3の勧告等を反映し、随時、法改正が行われてきています。

1 マネー・ローンダリングとは?
犯罪行為で得た資金を正当な取引で得た資金のように見せかける行為や、口座を転々とさせたり、金融商品や不動産、宝石などに形態を変えてその出所を隠したりすること

2 テロ資金供与とは?
爆弾テロやハイジャックなどのテロ行為の実行を目的として、そのために必要な資金をテロリストに提供すること。架空名義口座を利用したり、正規の取引を装ったりと、お金の流れを隠す点でマネー・ローンダリングと共通している

3 FATFとは?
金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering)。1989年アルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間会合。2001年アメリカ同時多発テロ事件発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進において指導的役割を担っている

犯収法改正の背景

近年においてはマネー・ローンダリングの形態が金融機関内にとどまらず、不動産売買や弁護士に資金の保管を依頼するなど、手口が複雑化してきています。そこで宅建業や貴金属取扱業など、金融機関以外の事業者にも犯収法の適用が広げられました。

しかしながら本人確認における新たな悪用の手口があとを絶たないため、現状の確認方法も強化する必要があります。たとえば、代表的な手口のひとつとして、免許証の使い回しがあります。免許証の顔写真の箇所に、別の顔写真を貼りつけて申請に利用するという不正が非常に多いとされており、対策を迫られています。

さらに、インターネットバンキングの普及や、仮想通貨、キャッシュレス決済・スマートフォン決済の広がりも確認方法の強化の一因となったと考えられます。
こういった背景から、犯収法は改正を重ね、2018年11月にオンライン上での本人確認完結が認められた一方、オンラインを利用しない場合の厳格化が2020年4月に施行されました。

eKYCならオンライン上で本人確認が完了

2018年11月の犯収法の改正により、ソフトウェアを用いた本人確認において、オンライン上で完結する方法(eKYC)が加わりました。従来必要とされた転送不要郵便の発送がなくなり、システムによって本人確認書類の顔写真とスマートフォンで撮った顔写真が同一人物であることを確認する方法、あるいは本人確認書類のICチップ情報と顔写真の一致を確認する方法などが認められることになったのです。

これらの方法をとると、郵便物を介することなく即時に本人確認できることから、たとえば口座をすぐに開設したい場合や、外国為替(FX)において即座に取引したい場合などに利用することができます。

ここでは、運転免許証を用いたeKYCの事例を2つご紹介します。

1つめは、本人の「生」の顔写真(セルフィ)と運転免許証の顔写真を照合させる方法。
現像された写真などではなく、生身の人間の画像であることが重要となり、免許証についても厚みなどから「本物」であることをソフトウェア側で確認します。

顔写真(セルフィ)+運転免許証の顔写真

顔写真(セルフィ)+運転免許証の顔写真のイメージ

2つめは、本人の「生」の顔画像と、免許証等のICチップ内の情報を照合させる方法。
この方法の場合、ICチップ内の情報を取り出すには免許登録時の暗証番号が必要となります。

顔写真(セルフィ)+ICチップ情報

顔写真(セルフィ)+ICチップ情報のイメージ

出典元:警察庁「犯罪収益移転防止法の開設等」

eKYC導入のメリット

eKYCの導入メリットは大きく分けて2つあります。

  • コスト削減
  • 契約離脱の最小化

下図で、eKYCを導入していない場合と導入している場合の本人確認におけるアクションやコストを比較してみました。

「eKYCを導入していない」ほうが「eKYCを導入している」に比べてアクション数が多くなっています。これはつまり、郵送物に関する人的コストおよび、ペーパー+郵送料コストが重なっているということです。転送不要郵便としてよく利用される簡易書留の料金は1通310円。郵送料だけでも、eKYCを導入すれば「310円×利用者数」のコストカットが見込めます

eKYCを導入していない場合は利用者が自宅に不在のため、本人確認のための郵便物を受け取れない(郵便局の保管期間は7日間)といった契約離脱のリスクを避けられず、確認に要する期間も長くなっています。

一方、eKYCを導入している場合は本人確認にかかる時間が短縮でき、契約完了までの期間が短くなっています。
利用者側では、eKYCではアプリをインストールしてもらう手間は発生してしまいますが、2種類の書類を用意しなければならないうえに、後日郵便物を受け取ってから本人確認が完了するよりも、その場で手続きが済むのを好む利用者のほうが多いのではないでしょうか。

eKYCの導入前後の本人確認フローの比較

eKYCの導入前後の本人確認フローの比較

「Polarify eKYC」の導入方法

「Polarify eKYC」では、SDK(Software Development Kit)※4という開発パッケージを利用しているため、既存のサービスに大きな変更を加えなくても、簡単にeKYCの機能を組み込むことができるメリットがあります。アプリ版だけでなく、ブラウザ版にもページ提供という形で対応しているため、事業者側の要望に柔軟に対応可能なのも大きなメリットです。実装方法は以下の4つになります。

アプリ版

  • eKYC専用の口座開設アプリを新規開発
  • 事業者側のアプリにeKYC機能を実装
  • ブラウザで口座開設申し込み機能を実装+事業者側アプリに容貌・書類の撮影機能を実装

ブラウザ版

  • スマホブラウザにeKYC機能を実装

「Polarify eKYC」の実装方法

「Polarify eKYC」の実装方法イメージ

本人確認書類のOCR処理や、書類真正性チェックなど、外部機能と連携することも可能となり、口座開設サービスがまったく初めての場合や、事務代行まで任せたい場合など、事業者様のご要望に応じたトータルソリューションも提案しています。

4 SDK(Software Development Kit)とは?
特定のソフトウェアパッケージやフレームワーク、ゲーム機、オペレーティングシステムなどのアプリケーションを作成するための開発ツールキット。開発のために必要なプログラムや技術文書がひとまとめにされている

「Polarify eKYC」の3つの特徴

【特徴1】選べる提供チャネルと充実したオプション機能

「Polarify eKYC」は、アプリ/ブラウザ両方に対応しているので、サービスにあわせて選ぶことができます。また、オプション機能には、OCRやBPOサービスによるバックオフィス業務の負担軽減、運転免許証真贋判定サポートや顔の使い回し検知による不正防止対策など、様々なニーズに対応することができます。

【特徴2】信頼できる世界標準の技術

「Polarify eKYC」のコア技術としては、Daon社(本社:アイルランド)による世界最高水準のアルゴリズムを利用しています。

Daon社は生体認証におけるグローバル市場のリーディング・カンパニーであり、日本では、出入国管理にその技術が採用されています。他国においてはオンラインバンキングや出入国・移民管理、旅券やビザ、運転免許証、選挙の有権者登録など、多くの政府や金融機関で活用されています。

【特徴3】改正犯収法に対応

改正される犯収法に応じたサービスをそろえているのも特徴のひとつです。犯収法に基づいた複数の本人確認方法に対応しています。

犯収法の施行規則と「Polarify eKYC」の対応範囲

犯収法の施行規則と「Polarify eKYC」の対応範囲

今後、さまざまな場面において、顔認証技術は進歩していくことが予想されます。

その際、「Polarify eKYC」で顔画像がサーバー保管されていると、それを元にオンラインでもオフラインでも、活用されうるビジネスチャンスが大いに考えられます。

たとえば、入店客の顔を検知し、入店と同時に、そのお客さまの属性や履歴がわかるようになったら――? お客さまへのアプローチ方法は、かつてない広がりをみせるのではないでしょうか。

eKYCサービスとしての「Polarify eKYC」が、ゆくゆくは生体認証を活用したビジネスとなりうる可能性があるのです。

「Polarify eKYC」や生体認証にご興味を持たれた方、詳細をお知りになりたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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Polarify 編集部

世界各国の政府・金融機関で利用される世界最高水準の生体認証技術を採用した「身元確認サービス Polaryfy eKYC」「当人認証サービス Polarify eAuth」を提供する株式会社ポラリファイのコラム編集部です。eKYCや生体認証に関する最新情報や導入メリット、活用シーンについて発信しています。