eKYCサービスとは?
オンライン本人確認の方法や仕組みをわかりやすく解説
- eKYC
公開日 2024.4.30
更新日 2024.4.30
デジタル化が進む現代社会において、身分証明や本人確認の手段も変化しています。その一つが「eKYC」です。eKYCを導入することで、企業は顧客の本人確認をスムーズに行い、業務効率を向上させることができます。この記事では、eKYCの仕組み、安全性、推進される背景、方法、企業が導入するメリットとデメリット、そして導入を検討する際のポイントについて詳しく解説します。
目次
eKYCとは
eKYCとは、"electronic Know Your Customer"の略で、「イー・ケーワイシー」と読みます。これは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル技術を活用し、オンライン上で本人確認を行う技術です。
具体的には、本人の顔写真や身分証明書の画像データ等を用いて、その人が本当に本人であるかを確認する作業を、オンラインで完結させます。このため、「オンライン本人確認」とも呼ばれています。
従来は、窓口や郵送で本人確認作業を行っていたため、手続きが煩雑で時間がかかっていました。しかし、eKYCを利用することで時間や場所を問わずに行うことが可能になりました。非常に便利なシステムと言えます。
eKYCの仕組み
eKYCの仕組みは、主に「身元確認」と「当人認証」の2つの要素から成り立っています。その実現方法は様々ですが、代表的な方式の一つとして、以下のようなプロセスが挙げられます。
まず、「身元確認」は、ユーザーが送信した本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)の情報を読み取り、その情報が正確で信頼性があることを確認します。次に、「当人認証」は、ユーザーが自分自身の写真(セルフィ)を送信し、その顔が本人確認書類の写真と一致するかを確認します。
この2つのステップを経ることで、ユーザーの身元と本人性が確認されます。ただし、これはeKYCの実現方法の一例であり、他にも様々な方式が存在することに留意が必要です。
eKYCの安全性
eKYCの安全性について語る上で欠かせないのは、生体認証の活用です。生体的特徴、例えば顔や指紋、虹彩などは一人一人異なり、偽造が極めて困難です。そのため、これらを用いた認証方法は高い精度と安全性を誇ります。
しかし、安全性が高いとはいえ、万が一の情報漏洩に備えるためにも、適切なセキュリティ対策が必要となります。通常、eKYCプロバイダーは、データの暗号化、不正アクセス防止のためのファイヤーウォールの設置、定期的なセキュリティチェックなどを行っています。
もちろん、利用者側でも、パスワードの管理や不審なメールへの対応など、自己防衛の意識を持つことが大切です。
eKYCが推進される背景・必要性
eKYCが推進される背景と必要性について詳しく見ていきましょう。
まず、デジタル化が進む現代社会において、対面での手続きから非対面での手続きへと移行する動きが強まっていることが挙げられます。これは、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークやオンライン決済、オンライン授業、オンラインイベント等が一般化したことによるものです。このような状況下では、利便性の向上や感染対策のため、本人確認にもオンライン化が求められます。
また、eKYCの推進は法律の改正とも密接に関連しています。もともと、犯罪収益移転防止法(犯収法)では対面での身元確認方法が定められていましたが、オンラインでの方法については定められていませんでした。しかし、2018年11月の改正犯収法によりオンラインでの身元確認方法が新たに定義されました。この改正を機に、事業者がこれまで実店舗や郵送で行っていた本人確認手続きを、スマートフォンを用いてオンラインで完結できるようになったことが、eKYCの本格的な始まりといえます。
犯収法の改正は、デジタル化の流れに法的な後押しをする形となり、金融機関をはじめとする事業者のeKYC導入を加速させています。このように、社会のデジタル化と法律の整備が相まって、eKYCの推進が図られているのです。
eKYC(オンライン本人確認)の方法
eKYCの方法、犯罪収益移転防止法(犯収法)に基づいて定められています。
犯収法に基づく本人確認の方法
犯収法 | 方法 |
---|---|
6条1項1号ホ | 「セルフィ撮影の画像」と「本人確認書類の画像」の送信 |
6条1項1号ヘ | 「セルフィ撮影の画像」と「ICチップ情報」の送信 |
6条1項1号ト(1) | 「セルフィ撮影の画像」または「ICチップ情報」の送信と銀行等の照会 |
6条1項1号ワ | 「公的個人認証(電子証明)」の送信 |
本人確認方式(Polarify対応)
対応本人確認書類一覧
本人確認時の事務負担比較表※2
2 法令対応準拠した確認項目になります。
どの方法を選択するかは、利用するサービスや個々の状況によりますので、最適な方法を選ぶことが重要となります。ここからは各方法の流れと対応可能書類について、詳しく見ていきましょう。
「セルフィ撮影の画像」と「本人確認書類の画像」の送信
この方法は、ユーザーが自身の顔を撮影した「セルフィ画像」と「本人確認書類の画像」を送信します。
主な対応可能な本人確認書類は、以下の通りです。
【主な対応可能書類】
- 運転免許証
- 健康保険証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 在留カード など
この方法のポイントは、幅広く普及しているデバイスや本人確認書類を使うため、多くのユーザーが利用できることです。また、企業側も物理的な書類の管理や目視による確認作業が大幅に削減され、効率化を図れます。ただし、画像の品質や明るさ、角度などが確認作業に影響を与えるため、ユーザーには適切な環境で撮影を行うことが求められます。
「セルフィ撮影の画像」と「ICチップ情報」の送信
この方法は、ユーザーが自身の顔を撮影した「セルフィ撮影の画像」と本人確認書類に内蔵されている「ICチップ情報」を送信します。
主な対応可能書類は、以下の通りです。
【主な対応可能書類】
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 在留カード
この方法のメリットは、セキュリティの高さと確実性です。ICチップには個人情報が暗号化されて保存されており、それを読み取ることで本人確認を行うため、なりすましによる不正を防ぐことができます。また、ユーザーの入力情報や券面に記載されている内容を取得することよりも確実性が高く、不備が少ないという特徴があります。
ただし、ユーザーにとってはICチップ読み取り可能なスマートフォンが必要となるため、使い勝手についても配慮が必要です。
「セルフィ撮影の画像」または「ICチップ情報」の送信と銀行等の照会
この方法は、ユーザーが自身の顔を撮影した「セルフィ撮影の画像」、または本人確認書類に内蔵されている「ICチップ情報」をeKYCシステムに送信し、それを銀行や公的機関のデータベースと照会することで本人確認を行います。
主な対応可能書類は、以下の通りです。
【主な対応可能書類】
- 運転免許証
- 健康保険証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 在留カード など
この方法の大きなメリットは、以下の2点です。
- ICチップ読み取り方式の場合、本人確認書類の内容確認の正確性が高い
- 本人確認書類の画像を使う場合、セルフィー撮影の必要がないため、ユーザーの作業や事業者の不備対応の負担が軽減される
ただし、企業側は銀行や公的機関との連携が必要となり、そのためのシステム構築や情報管理の体制が求められます。また、ユーザーのプライバシー保護にも十分な配慮が必要となります。
「公的個人認証(電子証明)」の送信
公的個人認証(電子証明)の送信は、政府が発行する電子証明書を使用して、本人確認を行う方法です。
対応可能書類はマイナンバーカードのみとなります。
【主な対応可能書類】
- マイナンバーカードのみ
この方法の大きな特徴は、ユーザーの作業負担、事業者の不備対応の負担が軽減されることです。政府が発行した証明書を使用し、証明書の有効性の確認まで行うため、偽造や誤認のリスクが非常に低くなります。ただし、この方法を利用するためには、企業側が対応したシステムを導入する必要があります。
Polarifyでは、「公的個人認証サービス(JPKI)」を提供しており、ユーザビリティとセキュリティを確保しつつ、低コストかつスムーズな本人確認を実現しています。
企業がeKYCを導入するメリット
メリットとして以下の2点が挙げられます。
【主なメリット】
- 本人確認作業の工数・コストの削減
- 顧客満足度の向上
eKYCを導入することで、企業が得られるメリットは数多く存在します。
一つ目のメリットとして、本人確認作業の工数・コストの削減が挙げられます。eKYCはシステムが自動的に確認作業を行うため、従来手作業でやっていた確認作業の自動化・効率化が期待できます。
二つ目のメリットは、顧客満足度の向上です。eKYCを利用することで、顧客はいつでも、どこでも簡単に本人確認を行えます。これにより、顧客の待ち時間や煩雑な作業を減らすことができるのです。
企業がeKYCを導入するデメリット
企業がeKYCを導入する際には、いくつかのデメリットが存在します。ただし、そのデメリットは犯収法対応義務のない事業者と犯収法対応義務のある事業者で異なります。
【犯収法対応義務がない場合のデメリット】
犯収法対応義務がない事業者がeKYCを導入する場合、対応可能な本人確認書類や対応端末を持たないユーザーが離脱してしまう可能性があります。また、eKYC対応アプリのインストールやセルフィ撮影に抵抗を感じるユーザーも離脱する恐れがあります。
【犯収法対応義務がある場合のデメリット】
犯収法対応義務のある事業者の場合にも、犯収法対応でない場合と同じデメリットは存在します。しかし、そもそも犯収法に対応しなければオンラインでのユーザー獲得ができないため、デメリットよりもメリットの方が上回ると考えられます。eKYCを導入することで、オンラインでのユーザー獲得が可能となり、事業の拡大につながるでしょう。
これらのデメリットは、ユーザー体験とサービスへの信頼性に影響を及ぼす可能性があるため、eKYCを導入する際には十分に考慮する必要があります。
eKYCサービスを比較する際のポイント
eKYCサービスを比較する際のポイントとしては以下の6つがあります。
【eKYCサービスの比較ポイント】
- 対応する本人確認方法
- 対応可能書類
- 自社の提供チャネルへの対応
- 導入にかかるコスト
- 操作のしやすさ
- カスタマイズ性
ここからはそれぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
対応する本人確認方法
eKYCサービスを比較する際、一つ目のポイントとして対応する本人確認方法があります。
例えば、顔認証や指紋認証、音声認証など、様々な認証手段が存在します。また、先述したように、本人確認書類の送信だけでなく、ICチップ情報の読み取りや公的個人認証の利用など、より高度な認証手段を提供しているサービスもあります。
その手段によりどれだけ確実に本人確認ができるのかを見極めることが重要です。どのような状況下でも確実に本人確認ができるのか、誤認識のリスクはどの程度なのか、などを確認するとよいでしょう。
対応可能書類
eKYCサービスの選択において、どの書類に対応しているかは極めて重要です。なぜなら、対応している本人確認書類の信頼性が、サービスの品質を大きく左右するからです。
例えば、ICチップなしの書類よりもICチップを搭載した書類のほうが信頼性は高くなります。最も信頼性の高い本人確認書類は公的個人認証に対応しているマイナンバーカードです。
自社の求めるセキュリティのレベルに応じて最適なサービスを選びましょう。
自社の提供チャネルへの対応
eKYCサービスを導入する際には、自社が提供するチャネルへの対応が重要となります。
例えば、スマートフォンアプリを提供している企業であれば、そのアプリ内でeKYCの処理がスムーズに行えるようにする必要があります。逆に、ウェブサイトを主なチャネルとしている企業であれば、ウェブ上での操作が容易であることが求められます。
このポイントが重要な理由は、本人確認の手続きのためだけに別のチャネルを使う必要がある場合には、ユーザーは面倒くさがってそのサービスの利用をやめてしまう可能性が高いからです。そのため、その本人確認サービスがユーザーにとって煩雑でない形で提供できるかどうかが重要となります。
導入にかかるコスト
eKYCを導入する際には、コストも重要です。まず、導入初期費用として、システムの設定やカスタマイズ、社内での運用研修などが必要になります。
また、ランニングコストとして、月額利用料やトランザクションごとの手数料、保守費用などが発生します。これらのコストは、提供しているeKYCサービスの規模や機能によって大きく変わるため、自社のニーズに合わせたサービスを選ぶことが求められます。
操作のしやすさ
eKYCサービスの操作のしやすさは、顧客体験に直結する重要なポイントです。操作が複雑であればあるほど、顧客は混乱し、結果的には中途で手続きを放棄してしまう可能性が高くなります。
そのため、eKYCサービスを導入する際には、以下のポイントを確認することが重要です。まず、操作手順が明確に示され、誰でも簡単に理解できるかどうか。次に、つまづきやすいポイントの対処法が説明されているかどうか。
また、ユーザーが迷ったときに簡単にサポートを受けられる体制が整っているかどうか。これらの点を確認することで、顧客がスムーズに本人確認を行えるサービスを選ぶことができるでしょう。
カスタマイズ性
eKYCサービスを選ぶ際には、そのカスタマイズ性にも注目しましょう。例えば、特定の業界やビジネスモデルに特化した本人確認の流れを必要とする場合や、特殊な本人確認書類を取り扱う必要がある場合など、自社のニーズに合わせてeKYCサービスをカスタマイズできるかどうかは大切な判断基準となります。
また、カスタマイズ性が高いと、将来的なビジネスの拡大や変化にも柔軟に対応できるため、長期的な視点から見ても有利と言えます。
eKYCサービスの導入はPolarifyまで
eKYCサービスの導入をお考えの方は、ぜひPolarifyをご検討ください。Polarifyは、お客様のニーズに合わせて最適なeKYCサービスを提供できるのが特徴です。
例えば、法令に準拠した本人確認が必要な場合には「Polarify eKYC」、法的義務のない本人確認や年齢確認が目的の場合には「Polarify eKYC ライト」など、シチュエーションに応じたサービスを選択いただけます。
当社のサービスは、最も信頼性の高い本人確認方法である公的個人認証に対応しています。また、対応可能な書類も豊富で、自社の提供チャネルへの対応も柔軟に行います。直感的な操作性を追求し、導入にかかるコストもできる限り抑えました。お客様のビジネスニーズに合わせたカスタマイズにも柔軟に対応いたします。
eKYCサービス導入のご相談は、ぜひ信頼と実績のあるPolarifyまでお問い合わせください。
おわりに
eKYCの導入は、企業にとって大きな一歩です。その一歩を踏み出すことで、ビジネスの効率化、顧客満足度の向上、そして法令遵守といった多くの利点を享受することができます。今後のデジタル化が進む社会において、eKYCは必要不可欠な技術となるでしょう。早期の導入が企業にとって有利となります。この記事を読んで、eKYCの仕組みやメリット、デメリット、そして導入時のポイントについて理解を深めていただけたら幸いです。最適なeKYCサービスを選び、ビジネスをさらに進化させていきましょう。